2026年10月5日月曜日

春~秋へ 2026

 

大きな転換期となりました。

 ~ 2026 / 3/4  ~

染物に触れ、師に学び、魅せられて早16年。

今まで学んだ図案の妙、型の制限、顔料の奥深さ、草木の困難。

太陽と風=自然の偉大さ。


追い付ける筈も無い大きな背中をずっと見ていたく、選択しました。

大好きな染物への最大限の抵抗。

いつかは自然の中で産まれる染物を体現したいと、ずっと心の中にあった。

その目標を果たす為に。

( 2025年末にて )

45歳にして初めての一人暮らし。

洗濯も料理も買い物も、当然自分でする訳で。

野菜の皮剥き、切り方、カレーに豚汁、焼き魚のコツ...etc.

様々な事を挑む前に妻に伝授してもらいました。


給湯、ガス、上下水道、ゴミ出しも今まで通りにはいかない。

自然の力を借りるとはそういう事なんだろう。


自宅から一番近いスーパーまではおよそ20分。

買い忘れはその日の大きなロスに繋がる。

今でもメモ帳を片手にカートを押している。


不便?自然の力を借りるとはそういう事だろう。


それもこれもようやく慣れてきた。

寒く寒く、寒かった季節、寂しい寂しい寂しい気持ち。

それも今は過ぎ去った。


染工具のため、運んで来た木材たちで棚を工作する毎日、

少しずつ彩(いろど)られていく手に馴染んだそれらが本当に美しく、

教室のみんなの顔を思い出しながらお酒を嗜(たしな)む。

現在もあれやこれやと進行中だ。



外での作業の為、庭の整地を行う日々。

横への体重移動が肝心な為、時には荒い根を掘り起こす。

地面が凸凹では足元に意識がいき、手元が疎(おろそ)かになる。


ただ、

草たちと虫たちにごめんねと何度も唱えるうちに気が落ち込む時もある。

だから、

いつか誰かがここで作業をしても、心地良く足が運べる様子を想像しながら。

その人の分まで「ごめんね」を唱えようと思う。


楽しい未来を想像しよう。


まだまだ、まだまだ時間が掛かる整地。

だけどゆっくり、少しずつ自然に感謝しながら進みます。



気がつけば春。





やりたい事が多過ぎて毎日時間が溶けていく、そんな感覚の中、
親友が家の補修とウッドデッキの改修の手伝いに訪れてくれた。

一泊、二日間掛けてそれに時間を費やしてくれた。
思えば、ここに来て初めて誰かと一緒に飲むお酒だった。

それがあいつだった事を嬉しく、誇らしく思います。



〜〜〜〜〜


( ドンッ! )

メジロがハンターに追われて自宅の壁に激突。
気絶していたので自宅内にて保護しました。
何度か手の中でよしよししていると無事に蘇生。
かと思えば、自宅中を飛び回り、どう外へ出そうかと頭を悩ませる。

紆余曲折の末、どうにか自然界へと飛び立つ。
その後の寂しさときたら、、、。

ちなみに、母が以前一緒に暮らしていたメジロの名をアズキと言います。
*(野鳥保護ボランティア有資格者)
それに習ってこの子はあーちゃんと名付けました。

そんな寂しさから作ったのが、上の写真の野鳥餌台、
そして園芸用の大きな器を購入して砂利を敷き、水浴び場も設置しました。

毎日窓から眺めていますが、、まだ誰も来ません(悲)。


〜〜〜〜〜


母が(勝手に)庭に持って来た山椒の植木鉢。
そこにアゲハ蝶の幼虫が産まれていると伝えると、
「すぐに家の中に入れなさい!」
と言われたので、室内で幼虫を育てる日々。

「枝が垂れてるから添木して!」
(自然界に添木なんかないから大丈夫やろ…)

「葉っぱ足りるかな!足らなそうなら買ってきて!」
(知らんがな…)

「水いっぱいあげないと!一日二回あげて!」
(…)

それからというもの、朝起きて自分が水を飲むよりも先に霧吹き、
仕事を終え自分がお酒を飲む前に霧吹きの毎日となりました。

そしてもりもり葉を食べるのでフンも盛り盛り。
共に作業スペースで暮らしているので掃除も大切な日課だ。

そうこうしているうちに、もう一匹産まれていた事が判明。
母へ報告したらまた面倒になると言おうか迷いましたが、
後になって判明した方が怖いので素直に報告。


「すぐに新しい山椒の木を買って来なさい!」
(…やっぱり…)


一番目の子は過保護に育てているので「かほちゃん」と名付け、
二番目の子は弟なので「おとうと」と名付けました。

あれよあれよと幼虫の姿も変化、立派に成長し、
数週間が過ぎたであろうタイミングで脱走を試みるかほちゃん。

蛹(さなぎ)へと進化する過程でこんな事があったなと、少年時代を思い出す。

何度も植木鉢へ戻した後、ようやく安全だと思ってくれる場所へ辿り着いた様です。

数日経ち、弟も姿を変えた。

蛹の状態は勿論、進化の階段が見つかると食を止め、便の様子が変わる。
自然界とは本当に凄い。

そこから更に数日が経ち、僕が出張で三日間自宅を空ける日を迎えた。
きっと羽化には立ち会えないだろう、そう察していた。

ゆっくり、そっと、体を支えている糸を切らさない様に庭に出した。
「お兄ちゃん、行ってくるね。」


帰宅したのは夕方、荷物を玄関にぱっと放り込んですぐさまカホと弟の元へ。
背中が綺麗に割れていて、無事に羽化出来たんだと一安心。

ぐっと疲れが出てすぐに就寝。
起床し、寝ぼけまなこで霧を吹こうにもそれが無い。

薄暗い中で見た昨日の景色を思い出し、そうか、良かったと納得した。

今でも時折、窓から庭を眺めているとアゲハ蝶がひらひらと舞っている。

「あぁ、あれはカホちゃんだ。あっちは弟だね。」

と、昼食を食べながら一人ぶつぶつ言っている。

末っ子の僕に妹と弟が一度に出来たというお話でした。


〜〜〜〜〜



そして夏から秋へ。


待ち望んだ染物の季節。
春の様な突風も無く、庭に張った生地が心地良さそうに強い陽射しを浴びている。

東から西まで、朝焼けから夕暮れまで。
遮(さえぎ)る建物も無く、晴れていればずっと太陽が当たる立地。

それゆえ、自宅内に篭(こも)る熱は予想以上だった。
軽い熱中症状になったのを機に、寝る時は除湿を掛ける事にしました。

春の息吹と共に現れたゼンマイの精。
人々が積み、鳥たちが集め残した芽たちが育ち立つ。
家の庭、ウッドデッキの隙間からみなぎる生命力。



夏になれば羊歯葉の影がその力をより一層反映している。
そう思いながら描き足した図案です。


(ゼンマイの影より)


〜〜〜〜〜



親友が夏休みと称し、二日間の休暇を取って遊びに来てくれた。
仕事終わりに来訪し、計三日間夜を共にした。
二日間みっちり、互いの趣味である釣りに勤しんだ。



本命の魚にはフラれたが、違う魚種との遊び方を見つけ存分に楽しんだ。
竿を振っているその時間は、中学生時代のそれと何ら変わらず心ときめいていた。

昨晩の残り飯を二人で握り、おかかに梅干し、じゃこに醤油。
特別でも何でも無い具材を包み込む。

湖畔で腰掛け二人で食べる。
「こんな所で自分達のおにぎりを食べる日が来るなんてね。」
そう言って、二人で笑った。

きっと、この時食べたおにぎりの味は忘れないだろう。
今までの人生で食べた、一番美味しいおにぎりでした。


〜〜〜〜〜


この頃になるとようやく整地も今年の目標地点に達していた。
ここまで来れば「帯一反分」。

この気持ちを支えてくれたのは家族の存在だった。
妻は月一、母と姉は都合がつけば来て手伝ってくれた。

妻と母は草刈り担当、姉は僕と共に根を掘る作業。
特に姉は自宅内の掃除を含め、バリバリ働くので大助かりだ。

いつもは一人で行う作業。
毎日少し、本当に少しずつ進む整地が、
家族とやれば二倍どころか四倍にも五倍にも進んでいる。

メンタルとは恐ろしい。
一人で食べるご飯より、みんなと食べるご飯の方が美味しい。
そんな感覚に似ている気がした。



九月には母と姉の(僕の)家族が来訪した。

毎年恒例の家族旅行を今年は僕の自宅付近に定めた。
一泊二日、この日の為にみんな頑張って来た。

初日は近所の道の駅へお昼ご飯とお土産を買いに行き、その後湖畔へ。
現地に着き、デッキへ座り、各々好みのお弁当を広げる。

「そっちのお弁当も美味しそう!」
「これあげるからこれちょうだい!」

そんな他愛もない話をしながら、みんなの口はもぐもぐ動く。
豊かな緑に囲まれながらみんなで食べるお弁当。

「みんなはどう感じてくれてるだろう。」

そんな事を思いながら共に計画してきた母と姉の顔を見ると、
相変わらず優しい眼差しでみんなを見ていた。
自信に満ちた眼差し。

“見守る”ってこういう事なんだと思った。

その後は淡水浴。

僕は勿論、忍ばせていた竿を取り出し、釣れた魚を家族に自慢した。

その後、地元銘菓店のかき氷を食べ、老舗旅館へ。
少しの休憩、少しの雑談、明日の準備を終え、みんなお楽しみの晩御飯へ。

みんなこの日の為に仕事を頑張って来た!
今晩はスペシャルメニューで近江牛のしゃぶしゃぶです!
(料理の写真の撮り忘れ・ごめんね)

美味しいも何も、料理が出される事がこれほど有難い事かと感じました。
(お母様、妻様、今まで本当に有難う)

はい。あっという間に食べ終わり就寝。

次の日は朝食を終え、買い出しの後、僕の自宅で焼肉パーティーです。
僕は末っ子、みんなの弟オーラ全開で料理を手伝わず、
出されるそれらをひたすら食べる。

ふと、目が合った家族が不思議そうに僕の顔を見ていたのが印象的でした。

「ふふ。たまにはお兄ちゃんに甘えるよ。」

楽しかった二日間。あっという間の二日間。

来年はステップアップで僕の自宅に泊まれるよう、また計画を練ろうと思います。
みんなとの思い出の場所が増えた。
そんな当たり前の事が本当に嬉しく思う。


家族でお弁当を食べたあの場所は、
親友とおにぎりを食べた湖畔だと付け加えておきます。


〜〜〜〜〜



五月中旬、軒先に訪れたツバメたち。

商店街で見てきたツバメたちとはどこか挙動が違い、
巣作りの為に来たのでは無いなと、何となく感じた。

町(巣)から山(材料)へ続く動線。
その端々で羽を休めているんだなと。

次々に入れ替わるツバメのつがい。
忙(せわ)しなさそうに少し休めば飛び立っていく。
次の世代へバトンを繋ぐための生命活動。

「何か手伝える事は無いかな?」

ならばと軒先に作業台を置き、
高さを稼いだ上で麺類を食べている器に水を入れ置いておく。
鳥用の餌も少し置いておこう。

そんな物はどうでも良いと、ツバメたちはそれらを無視して飛び回る(悲)。


この子たちも絵へ。そして図案へと昇華する。
秋になり型へ。

せっかくなのでツバメたちが羽を休めていた軒先で染めました。

そしてこの地へ来て初めて試みた化学染料。
まだまだモノにするには勉強の日々です。


(思い通りにいかない ツバメたち)



そんなこんなで45歳にして初めての一人暮らしも半年が過ぎました。
自炊、環境整備、そして染物と、、
自分勝手な感覚では三年目。

凝り性なので、最初から難しく考える癖がある。
ですが、買い物、料理の時間効率は段々と良くなっている。


長所でも短所でもあると捉え、心地良い妥協点を探し出そう。


厳しい冬に向けて。





~ fin ~