2024年10月21日月曜日

大人の修学旅行(沖縄)

 

師との2人旅の約束が、お客様も巻き込みあれよあれよと9人旅へと変更。

その中のお1人が今回の旅を「大人の修学旅行」と銘打って下さいました。


なるほど。

旅に名前があるのも楽しいものだ。


それほど早くはない朝の電車を乗り継ぎ空港へ。


不慣れな満員電車でさっそく酔い、次の駅でトイレへIN。

気分が悪いまま空港に着いたが、耳抜きが苦手な僕は飛行機内でも苦しんだ。


耳と首の間がピキピキする中、那覇空港に降り立つとそこはとても湿度の高い世界だった。

早速レンタカー屋へタクシーで向かい、みんなを迎えに空港へ戻る。

その後は蕎麦屋さんへ。先生を待つ間での腹ごしらえだ。

何やら人気店らしく、観光客でごった返している。


15分ほど待って待望の沖縄初料理。



ソーキ蕎麦は売り切れで沖縄蕎麦を注文。
蕎麦の味よりも太陽と月を表している赤黄色の箸に興味が湧いた。

時間になり、先生を空港へ迎えに行き那覇市の壺屋通りでみんなと合流した。




この通りで1番歴史のある登り窯や見どころ、名店を先生が案内して下さった。


そのまま国際通り近くの市場へ行き、ブルーシールのアイスクリームを先生が所望。
小さな店先でみんなで食べた。

先生が昔見た市場の景色とは随分違うらしく、
その時は悲しそうな眼をしていたのが印象的だった。


夕食は沖縄舞踊がライブで楽しめる料理店へ。


料理も美味しく、舞踊も素晴らしい、先生は何度も頷きながら口を動かしていた。


〜 2日目 〜

ホテルで朝食を済ませ、「城間紅型工房」へ。
今回、先生の計らいと当主の快い承諾により実現した今旅1番のメインイベントです。


工房玄関前に干されていた藍型が気持ち良さそうに出迎えてくれました。
*工房内は撮影禁止

当主が不在で奥様が対応して下さいましたが、とても丁寧な言葉遣いや優しいやり取りで
紅型初心者でも理解が深まる時間となりました。

また、仕事をなさっていた方々も嫌な顔を1つも見せず、
丁寧に受け答えをして下さった事に心より感謝致します。

9時〜11時までみっちり2時間、されどあっという間の2時間。
良き紅型見学の時間となりました。

(覚書) 藍型 おがくずではなく砂浜から拾う砂を使用


その後、昼食をはさみ (とんかつ/めっちゃ美味!)  首里染織館へ。

ここでは紅型の歴史 (昔〜現在の作品) に触れ、
首里織の実演や主に使用されている染料などの見学をさせて頂きました。


2階にある紅型の実演ルームで自らも紅型工房を構える金城昌太郎氏と出会いました。
先生と昌太郎氏は初対面との事でしたが、お互い芹沢銈介氏とは面識があり、
長い長い、とても奥深い立ち話を繰り広げておられました。


時折降る雨に傘を購入したり、カフェでひと息入れながら首里城へ。




ご存知の通り、2019年の火災により正殿をはじめとする9施設が消失し、
現在復旧中ではありますが、首里一望をひとめ見たく、頑張って登って来ました。

この日の夕食はホテルから徒歩5分ほどの料理店へ。
正直、沖縄に来る前は料理が口に合うのか少し心配してましたが、
どこのお店も美味しく、何より飾られている額絵、料理が盛られているお皿、
敷布、その全てに味があり「民藝」の世界が無意識で創られているんだなと感じました。


〜3日目 〜

この日の朝食は「沖縄第一ホテル」へ。

門戸を開け、庭に入ると古びた椅子が目に入った。
屋根瓦とそれがこのホテルの歴史を物語っている。

扉を開けると芭蕉布が様々な作品に織りなされている。
壁には古紅型が飾られており、棚には金城次郎や島岡達三の絵皿が並んでいる。

料理が用意される間にしっかりと胸にその景色を写し込んだ。

ここもまた、出される物すべてが美しかった。


当たり前の陶器、当たり前の卓布が本当に美しい。


朝食後はもう1つの大イベント、喜如嘉へ向かった。
車で高速を使いおよそ2時間。憧れの芭蕉布に会うためだ。

道中、約1時間半のドライブの後、降り立った道の駅でようやく沖縄の海に出会えた。


空が大きく、雲が格好良く、海の色が優しかった。
左手に海、右手に山を眺めながら車を走らせる。

自然の厳しさと共に育った山々の木が、芹沢図録で見た図案と重なり胸が高鳴った。

沖縄ではハイビスカスの赤が所々を彩り、
ここまで来ると芭蕉の緑が太陽の光を晒し、あちらこちらに映えている。


大宜味村・「芭蕉布会館」

建物に入り、係の方に説明を受ける。
2階の織手さんたちは12時から休憩との事、
到着が11時半だった事もあり、大まかな説明の前に実演を見学させて頂きました。

なるほど湿度の高い地域の織物だけあって、織りなす中で1番重要なポイントは湿度。
屋根のある建物なのにコンクリートの床は水溜りが出来ている。

梅雨期以外は加湿器を常時発動させ、織る合間に霧吹きで水分を与えながら織られている。
高気温に高湿度、美しい布の前にはやはり厳しい仕事風景がありました。

2階で15分〜20分見学しただけで全身が湿っている。
そういえば沖縄に来てからずっと肌は汗ばんでいるし、髪もしっとりと濡れている。

その後1階で係の方から芭蕉布のいろはを聞き、先生から琉球藍の特徴や
芹沢時代の作品制作の裏側をお聞きした。

帰りの下り坂を降りると駐車場の横に民家があり、
ずけずけとお邪魔して沖縄の神話やそのお宅にまつわるエピソードを聞いた。
*おばあちゃんありがとう


同じ道を車で引き返す。
今度は逆で左手に山、右手に海。

当たり前の事だけど、こんな変化に気付ける心を大切にしたいなと、ふと、思った。

昼食はその帰り道にあった道の駅で。
各々、ソーキ蕎麦やアグー豚の定食を注文した。
僕は何も迷わずチキンカレーを頼んだ。

そこから、帰りの道中に先生の発案で「万座毛」なる場所に行きましたが、
僕は運転の疲れもあり、施設で小休憩。

みんなは絶景を堪能されたとの事です。


そして最後の場所へ。



「読谷・やちむんの里」

先生の盟友・稲嶺盛吉氏のガラス工房を訪れました。
先生と稲嶺氏のエピソードは下平清人図録の一文にありますので、
ここでは割愛しますが、どれもダイナミックで力強い作品が並んでいました。

ここでもカフェで小休憩を挟みましたが、とても素晴らしい空間でした。

その後、読谷山窯や金城次郎工房を訪れ、時間の許す限り景色を楽しみ、
ホテルへと帰路に着きました。

夕食はホテル近くの居酒屋へ。
最後の沖縄料理、あいにくホテルへ帰る頃には大雨になり、
びちゃびちゃに濡れながらお店へ入る。

しかしながらこのお店も民藝の香りが濃く、濡れた体よりもそれへの意識が集中される。
出される料理も全て美味。相棒はやはりオリオンビール。

お店を出る頃にはすっかり雨もやみ、ほろ酔い気分でホテルへ戻りました。


〜 最終日 〜

大阪組は8時半にフロントに集合。
先生組は昼前に出れば間に合うのに、僕らの時間に合わせてフロントに
来て下さっていました。

また会おうとみんなで言い合い、いよいよ先生と沖縄とお別れです。


不思議と寂しくない感情。
何度も先生とその言葉を交わして僕はいつの間にか強くなったのだろう。

あの時もそう。この時もそうだった。
その都度、先生との約束を果たして来た。




「ジロちゃん、今度は2人でボロボロの飛行機で離島にでも行こうか。」



僕の先生がくしゃっと笑った。



約束が増えた帰り道。
帰りの飛行機ではなぜか耳が痛くならなかった。





〜 fin 〜






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