僕の好きなアングルを意識して撮影したとは彼女の意。
染めの作業をしている間も、「見て!良いのが撮れた!」とちょっかいを出して来る。
何を思い立ったのか、一眼レフを手にしているではないか。
正絹の紬地八寸帯。
そうそう僕が染めれる品でもなく、言うなれば真剣勝負なのである。
しかし手を止め、写真を見てみると、これが中々良いではないか。
うむむ。
僕の好きなアングルである。
何度も何度も同じ言葉を発するので、はっきり言って作業の邪魔である。
次第に邪険に扱うが、いやいやこれは少し浅はかで、さらには具合が悪い。
何故ならば、彼女がこれを機にカメラの魅力を見出すのなら、これほど愉快な事はない。
その都度手を止め、「良いね!良いね!」とは僕の弁。
これはお世辞ではなく、少々悔しいが率直な意見であった。
ピントのボケた写真もあるが、それはその瞬間をとらえようとした焦りであり、努力でもある。
何よりその一枚でも多い撮影枚数が嬉しくもある。
トリミングせずとも被写体が中央にあり、その時は水平を保っている。
被写体を画面の端に撮る時は微妙に傾かせている。
僕が毎回意識する撮り方である=僕のアングル。
要は主役を輝かせ、写り込む線は歪もうがどうでも良いのである。
トリミングせず、角度調整をせずと言う点では僕よりずっと達者ではないか。
「カメラは愛情ね♪」
たわけか。
んなもん、こちとら、とうの昔にその心で貴方を撮影してますよ。
平成二十七年五月五日・こどもの日
*撮影・お嬢
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